大学生のリアリティショック

 こんにちは🍑。うまくまとめられず長々と書いていたら8月分遅れました、、😅 まだ成績に間に合うのかは不明ですが、一応投稿しておきます。

 

 卒論の先行研究を探していたところ、大学の進学動機に応じた学業に対するリアリティショックの感じ方の差を検討した論文「大学生の進学動機と学業に対するリアリティショック」(半澤、2014)を見つけました。

 

 大学進学動機とは、何を目的として大学に進学するのか、あるいは進学してきたのかということをあらわすものです(古市、1993)。先行研究では、授業内容や学科、将来の目標といった学業に関わる要因を重視した学生は入学に対して満足しており高い適応を示しますが、消極的な理由で進学を決めたり、進学先の選択を偏差値や大学名などといった理由で行ったりした学生は、入学後に不適応の状態に陥りやすいというということが明らかにされています。

 

 また、学業に対するリアリティショックとは、「入学前に抱いていた大学における学業イメージや期待と、大学入学後に経験している学業との間の現在におけるズレによって生じた否定的な違和感」(半澤,2007)と定義されているものです。講義で教員が話していることの意味がわからなかった・大学の教員の教え方は下手だと感じたといった「教員不満」、講義の内容に不満を持つ「講義内容不満」、などが挙げられています。

 

 この論文では、学生を大学進学動機に応じて分類し、大学進学動機の違いによって学業に対するリアリティショックの感じ方が異なるのかどうかについて研究されています。大学生を大学進学動機に基づき「学業中心志向群」、「無気力群」、「就職・学業志向群」、「進学動機曖昧群」、「就職・享楽志向群」 の五群に分類し、群に応じて学業に対するリアリティショックの得点に差があることを明らかにしました。

 

①学業中心志向群
 学業中心志向群は勉学志向の得点が高く、大学生活の中で学業を重要なものとしている群です。

 この群では、「講義内容不満」 や「履修不自由感」といった学業に対するリアリティショックを感じる程度が相対的に高いことが示されました。これらのリアリティショックは,特に講義の内容であったり、自分の好きな科目を履修できないといったことに対する不満です。学業を重要なものとして捉えているこの群の、これらのリアリティショックの得点の高さは妥当な結果であると考えられますね。

 

②無気力群
 無気力群は、いずれの大学進学動機の得点も高 くなく、大学進学時に重視した事柄がない群として分類されています。

 この群は、「講義内容不満」という学業に対するリアリティショックを感じる程度が相対的に高いことが示されました。このような群であっても、講義の内容には一定の期待を持っていたことが推察されています。

 

③就職・学業志向群
 就職・学業志向群は、「勉学志向」と「資格・ 就職志向」の両方の得点が高く、大学生括の中で学業を重要なものとして位置づけているのと同時に、資格をとったり就職を有利にしたりするようなことついても大学生括の中で重視している群だと考えられています。

 この群は特に「履修不自由感」 の得点がほかの群よりも高く、また、「時間束縛感」 についても5群の中で2番目に高いという結果であった。この群は学業中心志向群と同様に学業を重視しているものの、資格取得や就職に関わることも重視し ているため、学業を重視しながらも資格取得や 就職に関連する講義を自由に履修できなかったり、講義そのものに時間を多く取られてしまったりすることに対して違和感を覚えたのだと考えられています。

 

④進学動機唾昧群
 進学動機曖昧群は、いずれの大学進学動機の得 点も中間程度に位置しており、大学進学時におい て何を目標としたわけでもなく、漠然とした進学動機に基づいて進学をおこなった群であると考えられています。

 この群は、ほかの群と比較して学業に対するリアリティショックを強く感じていないという結果でした。進学動機曖昧群は、他の群と比較して大学生括の中において学業を重視も軽視もしていない群として捉えることができます。そのため、学業に対するリアリティショックを感じる程度が他の群と比較して高くなかったのだと考えられます。

 

⑤就職・享楽志向群
 就職・享楽志向群は、資格・就職志向と享楽志向の得点が高い群です。大学は就職するためにとりあえず通うところ、遊ぶために通うところといった考えを持つ群であると考えられます。

 この群はほかの群と比較して、「教員不満」と「時間束縛感」の得点が高いという結果でした。進学動機曖昧群と同様にこの群もまた、学業を重視しているとはいえませんが、この群の「教員不満」 が高いという結果から、学業を重視していない学生であったとしても大学教員の教授法や教員との関係に不満を持つ程度が高いことが明らかになりました。

 

 学業至高の学生が講義内容に対してリアリティショックを感じることは予想できましたが、無気力志向や享楽志向の学生でも、教員や講義内容にリアリティショックを感じている、期待を持っていたという結果には驚きました。

 大学に通おうと思った理由である「大学進学動機」と、大学進学後に感じた理想と現実の差「リアリティショック」を絡めた研究はとても面白いものでした! この論文を参考に、自分の研究も進めていきたいなと思います。

 

🌟参考文献

 

半澤礼之(2014)「大学生の進学動機と学業に対するリアリティショック」北海道教育大学紀要 教育科学編,64(2): 233-240

 

古市裕一(1993)「大学生の大学進学動機と価値意識」CAREER GUIDANCE STUDY 1993 No .14