同じ視点に拘っていてはいけない、という話。

こんばんは。卒論、全然進まないですね。難しいです。

今回は、マスメディアの自殺に対する好影響と悪影響に関する論文を読んでみました。齊尾武郎(2012)の「Werther効果とPapageno効果:自殺予防におけるマスメディアの功罪について」です(詳細下記)。

 

マスメディアが自殺に対して与える影響のほとんどは、好影響として「パパゲーノ効果」、悪影響として「ウェルテル効果」の二つに分けることができます。

 

パパゲーノ効果とは、自殺を考えるくらいの困難を抱えた人が、困難を乗り越え、自殺を思い止まった話や、自殺予防として存在するサービスについての情報に関する報道は、自殺予防に繋がる事象のことです。これまではマスメディアで自殺を取り扱った際のデメリットを減らすことに焦点がありました。そのため、有名人の自殺場所や手段を詳しく書かないこと、自殺を美化し、悲劇的な内容として報道しないことなど、自殺を促進しない報道報道を取ることが多くありました。しかし、パパゲーノ効果の提唱者であるThomas Niederkrotenthalerは、マスメディアは自殺を促進させる可能性があるものの、報道内容を変えれば自殺予防に繋がるとし、マスメディアを積極的に利用することで自殺予防を目指しました。一方、Merika Sisaskらは、自殺率自体を減らすことを目的とし、マスメディアそのものを消極的に利用することで、自殺行動の抑制を目指しました。しかし、マスメディアが与える影響に関する証拠は不十分であるため、今後の研究が期待されています。

 

ウェルテル効果とは、マスメディアの自殺報道により自殺が増える事象のことです。例えば、社会問題に関連した自殺が増加しているという報道があげられます。世の中の辛さを伝えることが自殺を促進するとされています。そのため、このウェルテル効果を防ぐため、報道内容を変えることで、自殺の促進を防ぐことが出来ると言えます。また、マスメディアで報道しない、という形を取るのであれば、Merika Sisaskらが述べたように、自殺率自体を減らすことにも繋がります。

 

この論文を読んで、自殺に対するマスメディアの影響はパパゲーノ効果とウェルテル効果に限らず、マスメディア自体を使用しないという新たな視点を持つことを改めて実感しました。自殺予防という観点で私の研究を進めるのであれば、マスメディアでの報道内容という小さな視点ではなく、大きな視点を持つことで、新たな可能性を見つけることができると思いました。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

【参考文献】

齊尾武郎(2012)「Werther効果とPapageno効果:自殺予防におけるマスメディアの功罪について」、『臨床評価』、第40巻1号、pp.215-220