ネットスラングの定着

 こんにちは松本沙希です。
 みなさんは「草」とか「リア充」のようなことばを使いますか?最近はこのようなネットスラングが若者の間で普通に使われていますよね。元々ネット掲示板で誕生し一部の人間の間でのみ使われてきたネットスラングが、なぜ一般(とくに若者)に普及し、定着したのか疑問に思い参考資料を探したところ、「若者ことばの発生と定着について」という面白い論文を見つけました。(とりあえず今回のブログでは普及の過程については置いておいて、定着についてのみ考えます。)

 

この論文では若者ことばの定着の特徴を以下の6つとしています。

特徴1. 使用場面が広いこと
 →会話の中で頻繁に現れ、使用場面も限定されていない
特徴2. 形態的派生形が存在すること
 →「キレる」から「逆ギレ」などことばが派生したり形を変えたりする
特徴3. 意味の転換
 →「いたい」(ギャグがつまらなく、つらい)など意味が変容する
特徴4. あいまいな表現
 →「〜っぽい」や「〜かも」のような断定を避ける表現
特徴5. 符丁的すぎるものは定着しない
 →あまりに暗号的すきたり、省略しすぎたりすると定着しづらい
特徴6. テレビを通じて流行った芸能人の言動を発生源とするものは定着しない
 →芸能人の口癖やギャグは一時の流行にすぎず、定着するものはほとんどない

 

 このような特徴をもつことばは若者の間に定着しやすいようです。この論文は2003年に発表されたものなのでインターネットのことばの拡がりについては言及されていません…残念です。まあ、これをネットスラングに応用するときは特徴6はあまり考えなくてもいいと思います。ネットスラングはもともと話し言葉というよりも書き言葉ですし、芸能人がテレビでネットスラングを使う場面は見かけませんから。

 

 この論文に基づいて考えると「草」や「リア充」が若者の間に定着したのも納得できます。特に「リア充」なんて上の特徴4以外を満たしています。若者の会話に頻繁に登場しますし、「非リア充」などの派生語もありますし、元の意味は「友達が1人以上いる」ですし、字面から意味が推測しやすいです。そりゃあ1度広まれば定着する訳ですね。

 

 普段使っていることばの定着についてこのように考察することがなかったのですが、結構面白いです。今回私が参考にした論文とても読みやすかったので興味のある方はぜひ読んでみてください。


参考
桑本裕二(2003)「若者ことばの発生と定着について」『秋田工業高等専門学校研究紀要 』、38、pp.113-120.